藍色の風 第18号目次
ねむれんのやけんど‥
診察室で「眠れんのよ〜」と訴える方はたくさんおいでます。状況をお尋ねし、症状に合う睡眠薬などを処方して終わってしまうことが多いのですが、不眠も生活習慣や家庭環境に大きく影響されます。それぞれの方の不眠原因を分析して、ゆっくりお話しできればよいのですが、残念ながら時間の関係でできていません。
『ぐっすり眠れる3つの習慣』田中秀樹著(ベスト新書)という本を読みました。一般向けの本ですが、睡眠に関して上手にまとめられています。私が気づいていなかったこともあり、少し引用しておきます。
学生時代に睡眠の講義がありました。赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなることに気づいたお母さんの話しです。生理学の教授はその母親の観察力の鋭さをしきりに誉めていたことを覚えています。「眠くなったら手足の温度が上がる」こういった生理学的事実が私の頭の中にインプットされました
しかしその知識は30年近くそのままでしたが、『ぐっすり眠れる3つの習慣』でその知識がさらに実用的に広がりました。「人は眠くなったら体温が上がる」という知識だけではクイズの正解にしかなりません。「よい睡眠を得るには熱を放散し、睡眠中の体温を下げなければならない。そのため、眠くなると手足が温かくなり、身体の熱を逃がしている。」という認識が必要だったのです。睡眠時の体温を観察すると、睡眠中は体温が低下し、目覚める頃には体温が上昇してくることがわかっています。
この事実を不眠の方に適応すると次のことがわかります。「寒いからといって、電気毛布をつけっぱなしにしたり、部屋の温度を高く調整して眠ったりするとよい眠りが得られない。」ということになります。冬季に電気毛布をつけっぱなしで眠られる方がおいでます。よい睡眠を得るにはタイマーを利用し、入眠時の1−2時間だけ使用すればよいでしょう。また一晩中暖房をつけて眠れば、却って睡眠を障害することになってしまいます。また食事をとると体温があがります。食べたすぐには眠りにくいわけです。熱い風呂や激しい運動でも体温があがり、寝入りが悪くなります。寝る前にはこれらの行為を避けた方がよいでしょう。なお、熱くない風呂なら入浴後自然に体温が下がってきますので、睡眠の誘導にはよい方法です。
もうひとつ、気づいたことがありました。朝、急に部屋の電気をつけられ「もう朝ですよ!」と起こされたことがあると思います。そんなとき、目をこすりながら「眠たいなあ〜」と思いませんでした?人が快適に目覚めるには、部屋が徐々に明るくなればよいようです。この仕組みを取り入れ、明け方から徐々に部屋の明るさを上げていく工夫をしたホテルがあるとのことです。しかしそんな面倒なことをしなくても、太陽を利用すればよいのです。少し太陽の光が差し込むようにカーテンを調節しておけば、白々とあけてくる夜明けの光でそれが達成できます。遮光カーテンを使ったり、雨戸を閉めて真っ暗にし、目覚まし時計で起きたりする方法は賢明でないことがわかります。よい睡眠をとお考えの人はご一読下さい。
【坂東】