藍色の風 第10号目次
裁判員制度をご存じですか?
2009年5月までに裁判員制度が始まります。私は裁判には興味があり、一度は傍聴したいと思っているのですが、未だ果たせていません。しかし、今回の裁判員制度導入にはいろいろと気になる点があり、皆さんにも考えていただきたく、私の疑問点を記してみます。
『ガイドブック裁判員制度』(法学書院)という本を読んでみました。
最初のページに次のような文章があります。
『市民が刑事裁判に参加する制度は、市民の自由や権利が不当に奪われることを防止するために、重要な役割を果たします。様々な経験や知識を持った市民が、その理性と常識に照らして「疑問の余地はない」と確信して始めて、有罪とする。そのような仕組みが市民のかけがえのない自由を守るのです。』
市民が参加しなければきちんとした裁判ができないのでしょうか?これまでの裁判に問題があったのなら、問題点を洗い出し、それを改善する努力が必要でしょう。この本の論旨を借りると、これまで裁判に従事した人達には理性と常識が無かったことになります。心臓外科の手術がうまく行かないからといって、一般の人達に応援を求めることはありません。最高裁判所のホームページにも「審理や判決が国民にとって理解しにくいので‥」と裁判員制度導入の理由が記載されています。理解しにくいのであれば、理解されやすいように、裁判に関係する人達が努力すべきではないでしょうか?
また先ほどの本には次のような記載もあります。『市民が裁判に参加する制度は80以上の国や地域で導入され、定着しています。例えばG8(主要8カ国首脳会議)参加国では、アメリカ・イギリス・カナダ・ロシアが陪審制度、フランス・イタリア・ドイツが参審制度と呼ばれる市民参加制度を採用しています。』
私が現時点で裁判員に指名され、3〜4日病院を休診にしなさいと言われても困ります。市民が裁判に参加するという欧州などの年間労働時間をOECD(2006年)の統計で調べてみました。アメリカ1,804時間 日本1,775時間 イギリス1,672時間 フランス1,535時間ドイツ1,421時間 オランダ1,367時間で、アメリカ以外はすべて日本より短時間です。オランダは日本より400時間も短く、これは日本より休日が二ヶ月半も多いことになります。またこれらの国では日本でよくみられるサービス残業、ふろしき残業などがあるとは思えず、実際の労働時間は日本の方が圧倒的に多いことでしょう。
クリニックに通う方の中で、減量の難しい方がよくおられます。お話しを伺うと、「普通の仕事は夜7時位に終わり、そのあとノルマの保険勧誘等、別の仕事のために地域を回る。帰宅は11時頃になって、それから晩ご飯を食べて、すぐ寝てしまう‥。」体重が減らない訳です。いろんな職種に、このような働き方をしている人が見られます。裁判員に指名されると、「仕事が多忙、自営業だから、パートだから‥」といって、裁判員を断ることはできません。日本人のこんな働き方をみていると、司法関係の人達こそが率先して、努力すべきだと思うのです。
今年2月に「来て。見て。わかる。裁判員制度」というフォーラムが徳島市で開催されました。出席したいと思ったのですが、フォーラムは土曜日の午後1時半開会でした。主催者は週休二日制の人が大多数と思っているのでしょうか?それとも日時を変えて、何度も開催されるのでしょうか?
司法制度改革審議会(2001年)の意見書に「国民のための司法を国民自らが実現し支えなければならない」と記載され、そのために裁判員制度を導入するとされています。しかしそうであればこそ、これまでの問題点を検討・反省して広く明示し、自らは何をどのように改善するのか、そして改善が困難な問題に関して、国民にどのような協力を仰ぎたいかを表明すべきです。
こういった手順を踏んでからでないと、国民が納得する裁判員制度にはならないでしょう。早急な導入は再考されるべきと思います。皆さんはどうお考えになるでしょうか?
【坂東】