ワーファリン休薬を指示されたら‥

当クリニックではワーファリンを使用している患者さんがたくさんいます。心房細動、人工弁置換、左室機能低下、肺塞栓症などの人にワーファリンを処方しています。

ワーファリンは血液をサラサラさせ、血栓をできにくくしていますが、他の診療科で治療を受ける時、そのワーファリンが診療の妨げになると考えられることがあります。  

抜歯などがその例で、「ワーファリンを服用したままで歯を抜くと出血のコントロールができにくくなる」と以前は考えられていました。古い知識のままの歯科医は、抜歯の4−5日前からワーファリンを中止するよう求めます。しかし、ワーファリンを中止しているときに心臓内に血栓ができてしまうことがあり、不用意にワーファリンを中止するのか危険です。当クリニックでワーファリンを使用している人にはその旨をお伝えしているつもりですが、先日次のような事がありました。

Aさんは70代の女性です。発作性心房細動に対して、ワーファリンを使用していました。8月の受診日に「歯を抜くのでワーファリンを中止するよう歯科医に指示されて、3日間中止した。」と言われました。抜歯であればワーファリン服用のまま歯を抜く技術がすでに完成しており、薬を中止する必要はないことを説明しました。ワーファリンはすぐに再開するよう指示し、その歯科医がワーファリンを使用したままでは抜歯できないというのであれば『藍色の風 第11号』で紹介した山之内歯科を紹介すると説明しました。Aさんはワーファリンを再開されましたが、受診から3日後に「左足が動かず、歩けない。」と私の携帯電話に連絡がありました。その状況からは脳梗塞を発症したと疑われたため、ただちに急性期病院を受診するよう指示しました。治療が早く行われたため、Aさんは再び歩けるようになりました。しかし、一歩間違えれば寝たきりになるところでした。

他科の診療で、どうしてもワーファリンを止めなければならない状況もあります。ワーファリン服用中の方で、他の病院からワーファリン中止を指示された場合は、必ず私にお知らせ下さい。 

【坂東】