藍色の風 第23号目次
メタボ・ロコモ・認知症
インドネシアの若い人達が日本の介護現場で働き始めました。先日もNHKテレビで、介護福祉士としての外国人受け入れに対して、賛否を問う討論番組がありました。現在でも介護に携わる人が少ないのに、団塊の世代が超高齢者になる時には、さらに人手不足がひどくなると言われています。介護に関わる人材をどのように確保するかが問題になっていますが、最も根本的で、大切な視点が抜け落ちています。
介護の人手不足対策も確かに必要なのですが、できるだけ介護をうけないで生を全うできる方法を考えましょう。現在介護を受けている方は残っている機能を維持・発展させるために、リハビリに努めましょう。私達にできることはお手伝いします。現在お元気な方も自分の体の弱点を確認し、将来の介護を避けるために工夫しましょう。私達が超高齢者の仲間入りをする時、何歳になっても自分で歩けるよう、身の回りのことは自分でできるよう、壮年期以降には用意をし始めた方がよいと思います。
介護が必要になる理由は@脳卒中A認知症B転倒などによる大腿骨頸部骨折が挙げられます。昨年4月から大々的に始まった特定健診は、肥満に伴う高血圧、脂質異常症、糖尿病に注目し、動脈硬化による脳血管障害や虚血性心疾患等を防ごうとするものです。しかしメタボ対策だけでは将来の介護予防に十分ではありません。
私がまだ心臓手術をしていた頃、「君らが心臓や血管をうまく治すから、長生きする人が増えた。しかし骨や筋肉がそれについて行かず、整形外科は大変苦労する。」とある整形外科医に言われたことがあります。その時は「整形外科も頑張って」とエールを送りながらも、心臓血管外科の知識や技術の優秀さを誇ったものです。しかし開業医になって、患者さんの骨や筋肉、また神経などの、いわゆる「運動器」と総称される臓器が、心臓や血管の機能についてきていないことに合点がいきました。将来、介護を受けぬようにするためにはメタボ対策のみでは不十分で、骨や筋肉、神経など、身体を支え動かす役割をもつ運動器の機能維持対策が必要です。
数年前から、整形外科領域でロコモティブシンドローム(運動器症候群)という概念が提唱されています。これは運動器の障害により、要介護になる危険性が高い状態をいいます。高齢になっても身体保持や運動を司る運動器の機能維持が図れるよう、若いときからきちんと配慮をしようと訴えています。
私が心臓の手術をして非常にお元気だった女性がいました。90歳も無事超え「100歳まで生かしてよ!」と頼まれていましたが転倒して骨折し、活動量が大幅に制限されてしまいました。心臓や血管だけが良くても、元気な超高齢世代を過ごすことはできません。
介護をうけずピンピンコロリと死ぬためには、メタボ・ロコモ・認知症への対応が必要です。メタボへの対策はある程度出来上がっていますが、ロコモ対策は不十分です。セミナー室にウォーキングマシンも導入し、適切なロコモ対策ができるよう準備しています。整形外科の先生達にも協力を仰ぎます。完成しましたらお知らせします。
将来、介護を受けずにピンピンコロリとあの世に行くためには、メタボ・ロコモ・認知症への対策が必要です。メタボ・ロコモ・認知症!語呂がいいのでぜひ覚えてください。
【坂東】