藍色の風 第25号目次
安いジーンズはお買い得か?
1本800〜900円のジーンズが販売され始めました。良い商品でなおかつ価格が安いのであればそれに越したことはありません。しかしそれで良いのかと、気になることがあります。
ギョーザに農薬が混ざっていた事件や、牛乳へのメラニン混入、またインゲン豆へのジクロルボス中毒と中国産品への信頼性が大きく低下しました。こういった事件があると、その生産過程の検証がなされ、品質管理過程は完璧だとする映像が流されます。しかしいくら近代化された設備を報道しても、こういった商品を生産する人達の労働環境を検証しなければ問題点はわかりません。
クリニックの待合室に『Days Japan』という写真月刊誌をおいてあります。内容が刺激的すぎるときには置かないようにしていますが、昨年の10月号に、中国ジーパン工場の実態が報道されました。「ジーンズを作る針子は18時間連続でミシンを回し続け、月給は日本円で2万4千円。給料日に2−3時間の慰労会が開かれるが、1日の休みもない。」と、取材した記者は書いています。日本向けのジーンズが、このような労働環境で作られたものでないことを、願わずにはいられません。
いろいろな工夫や発明により、物の生産は効率的にはなるでしょう。しかし、私達の常識を越えるような安い商品が販売されるとき、それを生み出した人達の労働環境を考える必要があると思います。近所の工場であれば、そこの人達がどのような働き方をしているのか、だいたいわかります。その働き方にふさわしい商品価格もわかり、値段にも納得できます。しかし日本から遠く離れた中国や東南アジアの産品は、どのような労働環境で作られたのか全くわかりません。出来上がった品物しか見ることができず、生産者の労働環境に思いを馳せることはありません。
長引く不況のため、私たちはより安い物、安い物をと探し求めています。しかしそういった私達の欲望のために、犠牲になっている人達が世界のあちこちにいるのではないかと気がかりです。安ければよいとするのではなく、労働者の生産過程やそこで働く人達の待遇にも注目する必要があると思います。
【坂東】