藍色の風 第11号目次
布袋さんのおなか
胸部レントゲン写真からは、体に関するいろいろな情報が得られます。胸部には心臓、大血管、肺、気管、食道、骨、筋肉などがありますが、時に首の甲状腺が下に降りてきて、陰影を作ることがあります。
さて、私が診察時に胸部レントゲン写真の説明をしていると「ああ、そうだったのか」とポンと膝を打つように、納得される方があります。
下の写真をご覧下さい。先日、「歩いたらせこい」と訴え、受診された女性がいました。左側は特別な疾患のない、30歳代女性Aさんのものです。右側が件の70歳代女性、Bさんの写真で、体重が70Kg後半を示す方のものです。
30歳代女性Aさん | 70歳代女性Bさん |
写真中央の白い部分が心臓で、その左右の黒い部分が肺です。写真はいずれも大きく息を吸って、息止めをした状態で撮影したものです。Aさんの写真では肺が胸の上から下まであります。しかしBさんの写真では肺の長さがAさんの半分くらいになっています。大きく息を吸っても肺が膨らめないのです。足早に歩いたり、階段を登ったりすると息苦しいはずです。一生懸命息を吸い込もうと思っても、十分空気が入ってきません。
これは肥満によって腹部脂肪が増加していることによりおこります。おなかにたくさん脂肪があるため、その脂肪が上の方に押し寄せてきています。胸とおなかの境には横隔膜という筋肉の膜がありますが、腹部の脂肪が横隔膜を押し上げ、肺を下から押し縮めているのです。肥満によって発生したこのような息苦しさを改善するためには、食事や運動の調整をして、体重を減らすしか方法はありません。
レントゲン写真でこのような説明を受け、納得して帰られる方がよくあります。みなさんの周囲にも、「布袋さん」のようなおなかをしている人がおられると思います。「歩いたらせこいんよ」と訴えていたら、「やせて、おなかの脂肪を少なくしたら、肺の膨らみも大きくなって楽になるよ。」と教えてあげてください。なお、管理栄養士がお役に立てることも、付け加えて下さい。
【坂東】