藍色の風 第13号目次
CKDって何だろう?
CKDってご存じでしょうか?わかりにくい略語ですが、CKDと呼ぶ腎臓病のとらえ方が腎臓内科の人達から提唱されています。Chronic Kidney Diseaseの頭文字をとってCKDと呼びます。日本語に訳すと「慢性腎臓病」ということになります。「なあ〜んだ、腎臓病なら知っている」といわれる方が多いかもしれません。しかし、単に慢性腎臓病と呼ぶのではなく、CKDと呼んで医療関係者以外の人に対してもキャンペーンを開始するだけの意味があります。自分には関係ないと思わず続けてお読みください。
慢性腎臓病は他人事と考えている方が多いと思います。しかし現在、血液透析が必要になる最大原因は糖尿病です。二番目の原因は慢性糸球体腎炎、三番目が高血圧症による腎硬化症です。二番目の原因は減少しているにもかかわらず、第一番目、第三番目の原因疾患はどんどん増えています。糖尿病や高血圧症で当クリニックに通っている方がたくさんおられます。そういった方々はCKDに注意しなければならないのです。
どのような状態をCKDと呼ぶのでしょうか?CKDの定義そのものは少し難しいのですが、平たく言えば「尿タンパクや腎機能低下が3ヶ月以上続く状態」となります。
さて、CKDと銘打って大々的にキャンペーンを開始した理由には次の三つがあります。第一の理由はCKDの状態が血液透析を必要とする慢性腎不全に進む以外に、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患をも発症させることが明らかになったということです。CKDを治療すれば、腎不全、心血管疾患のいずれにも、良い効果が期待でき、非常に効率的です。
第二の理由としては治療法の進歩があります。CKDへの具体的な方策として
- 厳格な血圧の管理
- 腎保護作用のある降圧薬の使用
- 尿タンパクを減少させるための食事・生活調整
・・・などが挙げられます。CKDへの効果的な対策が明らかになったので、治療を推し進めようという訳です。そしてその治療方法は個々人に合わせていろいろ工夫をする必要があります。医師をはじめとした医療スタッフが、治療方法を組み立てていかなければなりません。
腎保護作用のある降圧薬と記載しましたが、降圧薬の中にも、腎臓を保護する効果の強い薬剤と反対に腎臓に負担をかけてしまう薬剤があります。CKDのときに、この腎保護作用の強い降圧薬を使用すると腎臓が守られ、血液透析への導入が遅くなるということがわかってきました。このため、CKDが見られるときには腎保護効果の強い降圧薬を使用し、病気の予後を良くしようとしているのです。
第三の理由として財政的な問題面があります。平成17年末に日本で慢性血液透析を受けている方は25万人を越えています。この医療に要する年間費用が1兆3500億円を越えており、その抑制が急がれるのです。
尿タンパクが陽性だからといって、自覚症状はありません。CKDの初期には、困ったなあと感じる症状はほとんどありません。しかしCKDの病初期から、将来の心血管病や血液透析を避けるために、対処していく必要があります。
診察に際して、以前よりは尿検査の回数が増加しますが、CKD対策としてご理解ください。なお、腎機能を評価するためにはいろいろな方法がありますが、外来でできる簡便な方法として、しばらくは血液検査でのクレアチニン値を利用します。適切な方法が提示されたら、その検査に切り替えていきます。
【坂東】