藍色の風 第17号目次
マカオを訪問して
先日マカオを訪れました。マカオは旧ポルトガル領で1999年に中国に返還されています。マカオに関する私の知識といえば、古くはザビエルが所属していたイエズス会が布教の根拠地としたところ、最近では北朝鮮の預金封鎖で有名になったバンコデルタアジアという銀行のあるところといったことくらいでした。
【セント・ポール大聖堂】
現地のガイドさんに案内されて世界遺産に選定されているセント・ポール大聖堂を見学しました。教会本体は火災で焼失し、残っているのは教会正面の壁のみですが、この壁にはたくさんの彫刻やレリーフが飾られています。ガイドさんは「レリーフの中に菊の文様があります。キリシタンという理由で日本を追われた日本人と当時マカオに住んでいた中国人が一緒になってこの教会をつくりました。」と、この大聖堂が日中合作であると説明しました。
現在、世界遺産に認定されるような建造物を17世紀はじめに日本人と中国人とが協力して建設したという史実におどろきました。帰国後、マカオに関する歴史書を読んでみると、たしかにそのような記述があります。その当時は民族の優秀性を競ったりするのではなく、お互いに人間として素朴に協力し合ったのでしょう。日本は、遣隋使や遣唐使を派遣してたくさんのことを中国から学んだ時代から、不幸にして戦争に至った時代まで、中国とは切っても切れない関係が続いてきました。しかし、中国とのいさかいに焦点があてられがちな風潮の中で、キリスト教という媒介があったとはいえ、日本人と中国人とがこのセント・ポール大聖堂を一緒に建設したという史実も、両国が互いに大事にしてもよいのではないかと思いました。ガイドさんの説明を聞きながら、遠い17世紀初頭に思いを馳せたひとときでした。
【坂東】