藍色の風 第17号目次
嘔吐下痢での対応方法
今年の3〜4月は、嘔吐下痢で来院される方が多数ありました。風邪症状が先行し、突然に嘔吐や下痢が出現する場合が多いようです。このような方が受診されると、失われた水分や電解質を点滴で補い、その日は絶食にしていただきます。そうすることで、ほとんど全ての方が翌日に症状が消失しています。ウイルス感染を受けた消化管を休ませ、足らなくなった水分や電解質を補うことで、胃や腸の回復が早まります。
こういった治療で嘔吐下痢に対応していますが、先日少し困った方が来院されました。70代の男性で、受診される数日前から嘔吐下痢がはじまりました。近医で点滴を受けるも改善しないため、翌日近隣の急性期病院を受診されました。そのときの血液検査で腎臓機能の指標となるクレアチニンが4.5に上昇していることを指摘され、抗生物質が投与されました。そのまま帰るよう指示されたのですが、食べるとすぐに嘔吐する状態であり、このまま帰宅してよいかどうかと奥様が電話をかけてこられました。
もともと、クレアチニンは正常の方であり、クレアチニンが急激に上昇しているのは嘔吐下痢による脱水が原因と考えられました。抗生物質をもらっただけで自宅療養を続けるのは危険であり、ただちに当クリニックに来られるよう伝えました。来院された患者さんは何を食べても吐く状態で、顔面も憔悴しており、強い脱水があることがわかりました。持参された急性期病院の血液検査結果は著明な腎機能の悪化を示しています。
このままの自宅療養は危険であり、ただちに他の急性期病院に電話して状況を伝え、緊急入院していただきました。入院して点滴治療を受け、10日ほどで腎機能も正常化し退院されました。
高齢の方が嘔吐下痢に見舞われますと、このようなことが起こりえます。高齢者では、クレアチニンが正常値を示していても、実際は腎機能が低下していることもあり、嘔吐下痢による脱水で急速に腎機能を悪化させることがあります。たかが嘔吐下痢と高をくくらず、適切な診療を受けられるようお勧めします。
【坂東】