藍色の風 第21号目次
山茶花の垣根
クリニック駐車場入口に山茶花の垣根があります。車での来院に際して、この垣根が邪魔になると言われたことがありました。しかし、日本家屋の常として、敷地入口と建物玄関とを正対させぬようにという思いが設計者にはあったと思います。時々、運転に自信の無い方の車が垣根にぶつかり、ごめんなさいと言ってこられます。垣根端っこの山茶花は根が少し浮きかけて、かわいそうな時があります。
その山茶花も11月頃から花芽をつけ始めます。毎朝出勤時に見ていますが、花芽の色づきには差があり、早く赤くなって膨らみ花を咲かせるものや、なかなか花芽に赤色が浮いてこないものがあります。「花芽の世界も十人十色‥」と思いかけて、学校教育に思いが至りました。
勉強をしてもなかなか理解できない子から、明晰天に通じるような子までさまざまです。どうしても後者の方が優秀と思い、その早さに惹かれてしまいます。しかし早く咲いた山茶花が優れているのではなく、どの時期でも花を咲かせれば山茶花の本望は達せられます。時期がくればすべて花芽は花を咲かせ、そして散っていきます。
何となく頼りない山茶花の垣根ですが、早さだけに魅了されない、人生の見方を教えられているようです。
【坂東】