糖尿病の新しい診断基準を7月1日より施行
『HbA1c(ヘモグロビン エィ ワン シ-)値6.5%以上』(JDS値6.1%以上)を追加

日本糖尿病学会は、今までの糖尿病診断基準を改め、血糖値にHbA1c値を追加した新診断基準を施行することにしました。

◆従来の糖尿病の診断基準
(1)早朝空腹時血糖値126r/dl以上
(2)75g糖負荷試験で2時間値200r/dl以上
(3)随時血糖値200r/dl以上

以上のいずれかの血糖値が認められる場合に「糖尿病型」と診断し、別の日に行った検査で「糖尿病型」が再確認できれば「糖尿病」と診断して、HbA1c値は糖尿病の診断では補助的な位置付けでした。しかし、HbA1cは採血時から過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映する指標として有用であるため、今回の改定となりました。

◆ 今回の新診断基準
上記(1)〜(3)に以下の項目が加えられました。
(4)『HbA1c値6.5%以上』〔JDS(日本糖尿病学会)値6.1%以上〕

ただし、HbA1c値のみが高く「糖尿病型」と判断された場合は「糖尿病」とせず、再検査をして血糖値が「糖尿病型」でなければ、「糖尿病疑い」にとどまり、3〜6ヶ月以内の再検査を必要とします。また、初回検査で「血糖値のみで糖尿病型」の場合は、典型的な糖尿病の症状や確実な糖尿病網膜症のいずれかが認められれば「糖尿病」と診断されます。

(※HbA1c値は合併する病気によっては病状を正確に反映しないことがあります。HbA1cが実際と異なる値を示しうるのは▽溶血性貧血▽肝疾患▽透析▽大出血▽輸血▽慢性マラリア▽異常ヘモグロビン症などです。これらの病気を合併している時には、従来の血糖値での診断基準を使用します。)

糖尿病は、早期からの介入が予後に大きく影響する疾患なので、早期診断・早期治療を目的とした改定がなされました。

HbA1cの値がいろいろ??

世界には3通りのHbA1cの基準があります。日本〔JDS(日本糖尿病学会)値・%表示〕とスウェーデンが独自の基準を持ち、アメリカとヨーロッパは〔NGSP値・%表示〕というシステムを作っています。NGSP値はアメリカとヨーロッパの糖尿病大規模研究にも使われ、事実上の国際基準値となっています。また、将来的には世界共通のIFCC値(国際臨床化学連合)になり、単位も%からmmol/mol(ミリモル・パーモル)になります。現在、日本で使用のJDS値はNGSP値より0.4%低いことが確認されました。日本の検査の方がHbA1c計測の精度は高いのですが、欧米で使用されている検査にその精度を求めるのが困難という事情があるようです。

今回の診断判定に追加されたHbA1c値には、欧米で使用されている〔NGSP値〕という表現は用いず、従来の〔JDS値〕に0.4%を加えた「相当値」であることを示す注釈を入れることとしています。変更は半年〜1年をめどに行う予定です。最終的にはIFCC値への移行案もありますが、クリニックでは当面、従来のHbA1c値(JDS値)の表示をします。当クリニックから血液検査を依頼している外注検査会社の値も、しばらくは〔JDS値〕で表示されることになっています。

変更の際にはお知らせ致します。

〔参考:第53回日本糖尿病学会年次学術集会・社団法人日本糖尿病学会〕

【検査技師:田中・宮原】