徳島の「しつらえ」

自分がしていることをうまく定義づけることができたり説明できたりすると、嬉しくなってハタとひざをうちます。「そうか、こういうことだったんだ」と。

クリニックでは季節の移ろいに合わせていろいろな飾り付けをしています。これは来院される方々に心地よい時間を提供したい、季節の変化を感じてもらいたい、さらに転じて光陰の速さを醸し出すことで、何かの御縁で私達と一緒に過ごすこの時間を大事に使って戴ければという意図があります。

こういった私の想いを的確に表す文章を見つけました。『京の着眼力』という本の一節を引用します。
『京都における「しつらえ」とは「時」を室内に取り込むことといえる。時を克明に表す自然の流れを取り込むことが、客人をもてなすことへと繋がるからだ。床の間に置く花器、香炉、燭台、掛軸。これらを春夏秋冬や正月など季節を単位に細かく変えることで、外に流れる自然の気と、内に流れる気を連鎖させているのである。四季の移ろいを暮らしに取り入れることは、毎日の暮らしを豊かに演出する知恵。部屋の装飾として美しい景色を取り入れる借景もまた、時を上手に切り抜き、室内に取り込んだものの代表的なものといえる。』

また宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』には次のような文章がありました。「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。ぼくたちここで天上よりももっといいとこをこさえなきゃいけないって僕の先生が言ったよ。」

しつらえを京に学んでもただ単に京を真似るのではなく、徳島らしい「しつらえ」で心地よい時間が流れるよう工夫したいと考えています。

 【坂東】