「デイサービスに行くと足が腫れる?!」

デイサービスに行き始めたら足が腫れた。」と訴えて来院される方が最近何人かありました。足が腫れる原因にはいろいろありますが、「デイサービスに行く事」と「足の腫れ」に関係があるのでしょうか?

写真の女性もそのように訴えて来院されました。自宅で療養していましたが次第に日常生活も困難になり、デイサービスを利用し始めました。通所後、しばらくしてから足が腫れ始めたといわれます。また悪いことに、腫れた足を引っかいて、それが次第に大きくなり、潰瘍になってしまいました。デイサービスと足の腫れに何らかの関連があるのでしょうか?一緒に考えてみましょう。

デイサービス利用の一日を尋ねました。送迎用のバスに乗り、施設に到着します。施設についてからの行動は各施設で異なるようですが、たいていは椅子に坐って体操をしたり、簡単な工作、塗り絵などをしたりするといわれます。そして食事をしたりテレビを見たり、また通ってきている人達と話をしたりもされています。こういった一連の生活においての体位や姿勢を尋ねると、帰宅するまで皆さん、椅子に坐っておられます。デイサービスの一日では椅子に坐った時間が非常に長いことがわかります。問題はここにありそうです。

私たちの身体では血液が循環して身体各臓器の機能を維持させています。血液は心臓から動脈を経由して末梢に運ばれ、毛細血管レベルで各臓器に栄養分を供給して老廃物を受け取り、静脈を経由して心臓に帰ります。このように血液が循環するにはいろいろな仕組みがありますが、足先まで流れていった血液が鯉の滝登りのように、1メートル前後の高さをものともせず心臓まで帰ってくるのです。本当によくできた仕組みと思うのですが、そんなこと当たり前と思って気にもされていない人がほとんどです。その仕組みが障害されるために、足が腫れてきます。

足は第二の心臓といわれますが、足の筋肉を動かせばその動きで静脈を圧迫したり、ねじったりします。そうすると静脈内の血液がどちらかに移動しなければならないのですが、静脈内には下図のような一方向弁がついており、圧迫を受けるとその一方向弁の向きに従って血液が移動します。足の筋肉を動かさなければ血液は心臓に帰りにくくなるのです。椅子に坐ってばかりいて、ふくらはぎの筋肉を動かさなければ足が腫れてきます。

また私たちは息をすることで胸の内部の圧力が変動しています。大きく息をすると胸の圧力が大気圧よりも低くなり、血液を心臓の方に呼び戻しやすくなります。息を吸う事による胸の圧力の変化を、「陰圧が強くなる」と表現します。椅子に坐って前かがみの姿勢でいると自然に大きな息をしなくなります。小刻みな呼吸では陰圧が弱く、血液を心臓の方に吸い付ける力が弱まります。いわゆるふんぞり返った姿勢で息をしていると胸の動きは大きくなり、陰圧も強くなって、血液は心臓に帰りやすくなります。長い講演などでは背伸びをして大きな息をするよう、演者が聴衆に勧めることがあります。気持ちがよいですね。こうすれば陰圧が強まって血液循環が良くなるのです。また小太りの方が椅子に坐って前かがみの姿勢でいると腹圧が高くなります。こうなると腹部の静脈を圧迫し、血液が心臓の方に帰りにくくなります。

デイサービスに行けば足が腫れるのではなく、デイサービスでどのような姿勢で、何をしているかによって足が腫れることがわかります。こういった点をきちんと踏まえて、いろいろな工夫をしている施設もあるようです。

ご両親や兄弟姉妹で、デイサービスに行き始めて足が腫れると訴えるようなら、上記のようなことを確認し、それを改善するよう教えてあげて下さい。

(図の引用:弾力性ストッキングコンダクター)

【坂東】