藍色の風 第29号目次
板門店訪問
(写真):板門店の軍事停戦委員会会議室で南北国境線上に立つ兵士を挟み、韓国側に立つ私と北朝鮮側に立つ私の次男 |
4月初旬の院内職員旅行で初めて韓国を訪れました。韓国と言えば買い物やドラマのロケ地巡りが好まれますが、私は板門店に興味がありました。個人では板門店に行くことはできず、許可された板門店ツアーに参加しなければなりません。韓国の哨戒艦「天安」が謎の沈没をして1週間後であり、北朝鮮の関与も疑われていたため、引率する韓国人添乗員の声は終始上ずっていました。
ソウル中心部には漢江という大きな川が流れていますが、ソウルを離れるとすぐ、その川沿いにはずっと金網の柵が張り巡らされ、上部には鉄条網が巻かれていました。一定の間隔で監視所も設営されています。金網には赤と白の石が一定の規則で挟み込まれており、理由を尋ねたところ、石の落下や規則性の改変で北朝鮮スパイの侵入を疑うとのことでした。板門店に近づくと北朝鮮の低い山々が見えてきましたが、木のない異様な山でした。冬季に暖をとるため、木をすべて伐採してしまった由です。
板門店に到着すると最初は韓国軍、途中から国連軍の管理下に置かれ説明を受けました。「板門店に外国人旅行客を招き入れるのは敵対行為であり、外国人に不測の事態が生じた場合の責任は韓国側にある」とのコメントが北朝鮮側から出されたとのことで、緊張感はさらに増しました。通常なら北朝鮮を望める展望台で説明を聞くところが、威嚇射撃等の可能性もあると警告され、コンクリート壁の後ろで横一列に並ぶよう指示されました。塹壕から敵地を眺めるように身は隠し、顔だけ出して説明を聞く異様な恰好になってしまいました。
現在でも朝鮮戦争は終結しておらず単に停戦しているだけであり、両国ともいつでも戦争を再開できるように準備をしているとの説明に、驚きもしましたが納得もできました。添乗員は「日本は平和ぼけしていると揶揄されるが、揶揄されてもいいので平和が欲しい。一触即発の状態が持続していることに変わりはなく、そのことで精神的に疲れる。」と心情を吐露していました。
ソウルに帰れば華やかな世界が繰り広げられていましたが、軍事境界線周囲の状況は現実社会の厳しさをまざまざと見せつけるものでした。朝鮮半島の平和的統一を心から願うと共に、日本の平和のためには、朝鮮半島の安定が必須であると理解できました。
【坂東】